今回の不具合内容は上型の切刃の部分が欠けたというものです。加工材は丸7ミリのステン(SUS304)の丸棒です。どれくらいの数量を加工して壊れたかは不明です。
当社の先代が作った金型です。型材はSKD-11です。
客先での加工条件は45TONプレスでSPMは30から35の間で加工していました。製品は住宅用設備機器です。この企業さんで後加工もして、梱包して出荷までするそうです。
今回の金型修理方法は・・・
修理方法としては、新規に上型を作る。欠けた部分を肉盛りして修正する。上型に余裕があればカット形状を上のほうに追い込む。の三通りの方法が考えられます。
今後の生産数量は年間2000本位ということです。
しかしながら、息の長い製品ということだそうです。この条件から考えると、肉盛りで直すのは応急修理的対応です。(修理時間は三通りの中で一番早い)
又、新規で作るには製作費用が金型償却の面で長期に渡り過ぎるということで、追い込み修理という方法を提案しました。
客先からは了承してもらいましたが、ここで問題発生です。昭和時代製作の金型なので金型図がありません。ここは現物測定をして、寸法を拾い、追い込み修理しました。
修理した後、試作をして、外観形状、バリなど問題無しでした。以上で修理完了です。
後は客先にて時々刃先に加工油をつけながら加工してもらえば、しばらく持ちます。
金型を長持ちさせるための豆知識
ちなみにカット型全般に言えることですが、上パンチには材料の一部しかあたりません。その現象によって上パンチは材料と反対側(横方向)に強く動かされます。(この力を側圧といいます。)
この力を受けるのが専門用語でバックアップヒール又はバックアッププレート(金型の構造によって呼び方が変わります。しかし側圧を受けるという役目は変わりません)と呼ばれるものです。特に刃先が磨耗してくると加工音も大きくなりますが、側圧も大きくなります。
したがってバックアッププレートは頑丈に作っておかないと側圧に耐え切れずに加工時にあおられたりして、クリアランス過大になりバリなどの発生の原因になります。
金型を発注する際は、金型図を見てこの点をよく確認してから発注してください。疑問に思うことは必ず金型屋さんに聞いてください。具体的に数値で答えられる金型屋さんはほとんどいないと思いますが(理論上計算式では数値は出ます、)経験上の判断は出来ます。
予算が少ないからといって、うまくいかなかったらバックアッププレートを厚くすれば良いという考えは通用しません。金型全体のバランスを見て設計しますので、バックアッププレートを厚くしたら、それを取り付けている板も厚く大きくしないとバランスが崩れてしまい、金型を取り付けるたびに色々な不具合が出る場合があります。
あと大事なことは、切刃も定期的に加工数量を決めてそれに達したらメンテナンスをするというのも金型を長く使い続けるコツです。