今回のプレス金型修理案件の内容は
今回は絞り加工を行うための、絞りポンチが何らかの原因で欠けてしまったのでそれを修理するという案件です。製品材質はSUS304、板厚2ミリです。絞り形状は幅10ミリ、長さ50ミリ、高さ8.5ミリを1回で絞るものです。絞り加工としては難しい加工ではありません。
修理方法は
修理依頼のプレス金型は昭和時代に作られたプレス金型で当然のことながらプレス金型図面はありません。欠けた部分が先端1ミリ程なので、角部のアール寸法を測っておいて欠けた部分までケンマで追い込んで、角部アールを付け直すという方法で修理することにしました。このような方法で無事修理することが出来ました。
注意すべき点
古いプレス金型の場合は角部アールが手仕上げになっていることが多いので、たとえ測っておいた寸法どおりに角部アールを付け直して、試し加工をしても材料が破断してしまってうまく製品が出来ない場合があります。このような時は慌てず、材料が破断した箇所の角部アールを調整しながらうまく加工が出来るまで、試し加工を続けることです。ほんのちょっとの手加減で角部アールを調整すればうまくいくはずです。
プレス金型による絞り加工とは、どのような加工なのか
難しく言うと、絞り加工前と絞り加工後で材料の形状が変わっても、材料の表面積が同じになる加工です。
絞り加工は材料を前後左右斜めに引っ張ったり、縮めたりする加工なので当然材料が横からの力を受けて、シワが発生します。シワが発生しては製品にならないので、これを防止するためにダイスと材料を板で挟んでシワを発生させないようにします。(この挟む板を専門用語でブランクホルダーといいます)ブランクホルダーをダイスに押し付ける力のことをクッション圧といいます。クッション圧も絞り加工では重要な要素で、強すぎると材料が切れてしまい、弱すぎるとシワが発生してしまいますので圧力を決めるのは経験のいるところです。プレス金型で絞り加工するにはダイクッションという装置がついている機械で行います。ダイクッションからクッションピンを介してブランクホルダーを押します。中にはその装置が付いていない機械を使うこともあります。そのときは、バネやウレタンゴムといったものをプレス金型内に組み込んで加工します。但しこれらは劣化しますので、定期的な交換が必要です。今回の案件はウレタンゴムが組み込まれていました。劣化していて交換時期でした。その写真を下に上げておきます。